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INSIGHTS

補助金は東京に集中しているのか

「補助金も結局は東京に集まっているのでは」——この疑問に、交付実績42万件の所在地データで答えます。結論は「金額で見ればイエス、件数で見ればノー」。しかも同じデータから、地方のほうが圧倒的に手厚く見える指標も出てきました。数字の取り方で結論が反転する、地域格差の読み方の話です。

この分析の要点

  • 交付金額では東京都が80.2%を占める。 神奈川8.0%を加えると首都圏2都県で約88%
  • しかし交付件数のシェアでは東京都は10.4%にとどまり、 北海道6.8%・福岡5.0%・大阪4.6%と続く。金額と件数で上位の顔ぶれがまるで違う
  • 金額の偏りは基金・事務局法人の本社が東京にあることによるもの。 「東京の企業が有利」を意味しない
  • 1法人あたりの受給回数は富山8.9回・滋賀7.5回に対し東京2.6回。 地方では同じ事業者が毎年継続的に受け取る構造がある

分析の方法

  • データ: gBizINFO(経済産業省)の補助金交付実績。地方公共団体向け交付金を除いた42.1万件について、登記住所の先頭から都道府県を判定して集計(判定不能はゼロ件)
  • 指標: ①交付件数のシェア ②交付金額のシェア ③1件あたり交付額 ④1法人あたりの交付件数(= 同じ法人が何度受け取っているか)
  • 注意: 住所は法人の登記所在地です。事業所や補助対象事業の実施地とは必ずしも一致しません

結果1: 金額の8割は東京、しかし件数では1割

交付金額で都道府県を並べると、東京都が80.2%で他を圧倒します。 2位の神奈川県8.0%、3位の埼玉県2.7%を合わせると首都圏3都県で9割超。 ここだけ見れば「補助金は東京に集中」で話は終わります。

ところが同じデータを件数で数え直すと、 東京都のシェアは10.4%まで下がり、 北海道6.8%、福岡県5.0%、大阪府4.6%、新潟県3.7%と全国に散らばります。 金額ランキングでは6位だった北海道が件数では2位、金額0.1%の滋賀県・富山県が件数では7位・8位に入ります。

都道府県別の交付件数シェアと交付金額シェアの比較。件数は東京10.4%・北海道6.8%・福岡5.0%と分散、金額は東京80.2%・神奈川8.0%と集中
左=交付件数のシェア上位8、右=交付金額のシェア上位8。同じデータでも順位と偏りの度合いがまったく違う(スケールも異なるため別パネルで表示)。

1件あたりの金額に直すと差は明快です。東京都は1件あたり約10.3億円、神奈川県は約4.5億円。 対して北海道1,384万円、富山県462万円、滋賀県425万円。 東京の巨額レコードは、国の事業を執行する基金・事務局法人や公的機関への一括交付であり、その本社が東京にあるために東京の金額として集計されているだけです。 このお金は最終的に全国の事業者へ配られていくため、金額シェアを「地域への配分」と読むのは誤りです。

結果2: 地方のほうが「1法人あたり」は手厚い

では地域差はどこに出るのか。交付を受けた法人の数で件数を割り、1法人あたり何回受け取っているかを見ると、順位はさらに入れ替わります。

1法人あたりの交付件数。富山県8.9回、滋賀県7.5回、福井県6.9回に対し東京都は2.6回、全国平均は3.3回
1法人あたりの交付件数(上位10と東京都)。全国平均3.3回に対し、北陸・東北の県が突出する。

首位は富山県の8.9回。滋賀県7.5回、福井県6.9回、佐賀県6.5回と続き、 全国平均3.3回、東京都は2.6回にとどまります。 この差の正体は農業です。富山・滋賀・福井・新潟で最も件数の多い交付金はいずれも「水田活用直接支払交付金」で、 これは毎年、対象となる農業者へ継続的に交付されます。 結果として「同じ法人が何度も受け取る」構造になり、1法人あたりの回数が押し上げられます。

逆に大阪1.9回、愛知2.1回、静岡2.1回といった都市圏・工業県は、 公募型の補助金を単発で使う事業者が多いため回数が伸びません。 つまり地域差は「多い/少ない」ではなく、継続型(農業の直接支払い)か単発型(公募型の投資支援)かという 制度構成の違いとして現れています。

結果3: 「募集されている制度」の数はほぼ横並び

交付実績ではなく、いま募集されている制度の側も見ておきましょう。 jGrantsに掲載された3,695件の補助金を対象地域別に数えると、 全国対象が2,514件と最多で、都道府県別では東京都1,179件が突出するものの、 愛知745件・石川737件・福井736件・福島733件……と、それ以外の県はおおむね700件台で横並びです。

制度の入口はどの県でもほぼ同じだけ開いているのに、 交付実績の姿は県によって大きく違う。この差を生むのは制度の数ではなく、 その地域の産業構成(農業が多いか、製造業が多いか)と、事業者側の活用度です。 「うちの県は補助金が少ない」と感じるとしたら、それは制度が無いのではなく自社の業種に合った制度に届いていない可能性が高いということです。

実務的な示唆

  • 「東京有利」は気にしなくてよい。金額シェアの偏りは事務局法人の所在地によるもので、 採択の地域的な有利・不利を示すデータではありません
  • 全国対象の制度を軸にする。募集中の制度で最も多いのは全国対象(2,514件)。 地元の制度と併せて必ず確認しましょう
  • 継続的に使える制度を探す。1法人あたり8.9回という地域があるように、 毎年使える制度は存在します。単発の投資支援だけが補助金ではありません

ホジョメトの都道府県別一覧からお住まいの地域で募集中の制度を、交付実績ページから過去に交付を受けた企業を確認できます。

注意点

  • 都道府県は法人の登記住所から判定しています。事業実施地や事業所の所在地とは異なる場合があります
  • gBizINFOの補助金情報はすべての補助金を網羅していません。府省が提供したデータの範囲での集計です
  • 交付金額には基金・事務局への一括交付が含まれるため、地域への実質的な配分額を示すものではありません
  • 本分析は情報提供を目的としたもので、特定の地域・法人を評価するものではありません

出典・データ

出典: gBizINFO(経済産業省)「補助金情報」、jGrants(デジタル庁)公開API。 当サイトが独自に集計・分析しました。地方公共団体向け交付金は除外。分析時点: 2026年7月。