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補助金バブルは終わったのか

「コロナの頃は補助金が湯水のように出ていたが、もう終わった」——事業者の間でよく聞く実感です。これは本当なのか、そして「終わった」あとの水準はコロナ前と比べてどうなのか。政府が公開する補助金交付実績42万件を年別に並べて、膨張と収縮の全体像を描きました。

この分析の要点

  • 交付件数は2019年の4.4万件から2022年に11.0万件へ2.5倍に膨張。 2023年は6.9万件へ4割減
  • 交付金額は2021年の15.1兆円がピーク。2023年は8.3兆円とほぼ半減—— それでもコロナ前(2019年4.5兆円)の約2倍の水準が残っている
  • 名称に「コロナ/感染」を含む補助金は2021年に全体の39%を占めたが、 2023年に4%、2024年にはゼロ
  • コロナ期(2021〜22年)だけ交付件数の最多府省が農水省から厚労省に交代し、 2023年に元へ戻った。「バブル」の正体は医療・雇用系の緊急支援だった

分析の方法

  • データ: gBizINFO(経済産業省)の「補助金情報」全54.6万件から、 地方公共団体向け交付金を除いた42.1万件。交付の証明日の暦年で集計
  • コロナ関連の判定: 補助金名に「コロナ」または「感染」を含むものを機械的に抽出。 名称に現れない関連制度(雇用調整助成金など)は「その他」に含まれるため、 コロナの実際の影響はここで示す数字よりさらに大きい
  • 期間の限界: 2017〜18年の少なさにはgBizINFO側のデータ整備の立ち上がりの影響が含まれます。 また2024年分は反映途上(2024年4月以降の登録が極端に少ない)のため参考値です

結果1: 件数は2.5倍に膨らみ、1年で4割減った

年別の交付件数はきれいな山を描きます。コロナ直前の2019年に4.4万件だった交付は、 2021年に7.6万件、2022年には11.0万件とピークに達し、 2023年は6.9万件へと前年比マイナス37%の急減。 「あの頃は補助金だらけだった」という体感は、データでも裏付けられます。

年別の補助金交付件数。2019年43,529件から2022年109,706件へ増加し、2023年は68,906件に減少。2021年はコロナ関連が39%を占めた
年別の交付件数(2017〜2024年)。オレンジは名称に「コロナ/感染」を含む補助金。2024年はデータ反映途上のため薄く表示。

山の中身を見ると、オレンジで示した「名称にコロナ/感染を含む補助金」が 2020年に4,900件(11.6%)で現れ、2021年には約3.0万件——実に全体の39.1%を占めます。2022年も3.3万件(29.7%)と高水準でしたが、2023年に4.2%へ縮小し、 2024年分では1件もありません。ひとつの政策テーマが3年間で生まれて消えていく様子が、 そのまま記録されています。

結果2: 金額は15兆円→8兆円。それでもコロナ前の2倍

金額で見ると、ピークは件数より1年早い2021年の15.1兆円です。 病床確保や営業支援など、単価の大きい緊急支援が先に積み上がったためと考えられます。 2023年は8.3兆円とピークからほぼ半減しました。

年別の補助金交付金額。2019年4.5兆円から2021年15.1兆円へ増加し、2023年は8.3兆円に減少
年別の交付金額(兆円)。ピークは2021年の15.1兆円。基金・事務局法人への一括交付を含む金額であることに注意。

ここで見落とされがちなのは、減った後の水準です。 2023年の8.3兆円は、コロナ前の2019年(4.5兆円)と比べればまだ約2倍。 件数でも2023年の6.9万件は2019年の1.6倍あります。「補助金バブルの崩壊」というより、異常だった2021〜22年から、コロナ前より一段高い「新しい平時」へ着地したというのが正確な描写です。

結果3: バブルの間だけ、主役は厚労省だった

交付件数の最多府省を年ごとに追うと、制度の主役交代が見えます。 平時(2019年以前と2023年以降)は農林水産省が最多で、 農業への直接支払いが件数の土台です。ところが2021年と2022年だけは厚生労働省が最多(2021年4.2万件、2022年4.5万件)。感染拡大防止・医療提供体制・雇用維持といった 緊急支援が、一時的に補助金全体の顔ぶれを塗り替えていました。

2023年には農水省が4.7万件で首位に返り咲き、構造はコロナ前に戻っています。 つまり「補助金が減った」という体感の正体は、誰でも対象になり得た緊急支援(給付型)が終了し、 目的を持った平時の制度(公募型・継続型)だけが残ったことにあります。

実務的な示唆

  • コロナ期の感覚で今を測らない。2021〜22年の「申請すれば通る」は歴史的な例外でした。 当時の経験を基準にすると、今の制度が異常に厳しく見えてしまいます
  • 補助金が消えたわけではない。金額はコロナ前の約2倍の水準で推移しています。 給付型が消えただけで、公募型・継続型の制度は残っています
  • 採択率もあわせて確認する。コロナ期は採択率も高い時期でした。いま検討している制度の直近の採択率を見て、現実的な期待値を設定しましょう

いま募集中の制度は補助金メトリクスで、過去の交付実績は交付実績の分析ページで確認できます。

注意点

  • gBizINFOの補助金情報は全制度を網羅していません。府省が法人番号付きで提供したデータの範囲での集計です
  • 金額には基金・事務局法人への一括交付が含まれ、事業者への実質配分額とは一致しません
  • 「コロナ関連」は名称による機械判定であり、名称に現れない関連制度は含みません(過小評価側の誤差)
  • 2024年分はデータ反映途上のため、実際の交付件数はグラフより多いと考えられます

出典・データ

出典: gBizINFO(経済産業省)「補助金情報」。当サイトが独自に集計・分析しました。 地方公共団体向け交付金は除外。分析時点: 2026年8月。